『頼三先生』
私が二十歳そこそこのあるクリスマスの日に故・松野頼三先生と一緒に食事に行く事になった。
当時、先生にとって私は一番年下の知人で、気楽な小間使いの様に思っていたと思う。いつも呼ばれると、先生の事務所でも自宅でもブーツに革パン、ロン毛で『こんにちはー』と行くものだから、、先生も、『こいつに自分の立場とか何か言っても無駄だな、、』と色々諦めていてくれたのだろう。先生のおしゃべりはいつも面白く。私は彼が大好きで、何処でも呼ばれたら直ぐ飛んで行った。
そのクリスマスの食事の帰り際に、
先生『大塚君、今日はクリスマスだが、その袋はプレゼントかい?』
私『そうです。一応、クリスマスだから、何も持ってかないのは悪いかと、、、』
先生『中身は何だい?』
私『あー開けないで、聞いちゃうのですね、、、、お洒落なバスローブです。先生にお洒落が解るかはわかりませんが、、』
先生『よし、貰おう。僕も君にプレゼントを用意してきたよ。』
私『え?』
先生『よく聞きなさい!大塚君、君は人生に於いて必要な才能を多く持っている。しかし君には教養が足りない。才能は補えないが、教養は幾らでも、、、これからでも補える。教養!!この言葉を色紙に書いて贈ろうと思ったが、、、面倒だったから言葉だけでいいな!後で自分で教養と色紙に書いて壁に貼っときなさい!』
私『あーー教養、 、、ありがたい言葉がプレゼントですか!?』
先生『そうだ!素晴らしいだろ!それじゃあ、先に失礼するよ。』と、迎えの車に乗り込んでいった。
『教養』そう、私にとって未だ足りないカテゴリーである。何故かと言うと、勿論、壁に『教養』と貼らなかったからである。
しかし、今思うと素晴らしい言葉を頂いた、私の人生に於いて、一つの大きな道しるべになったのは事実で。先生には今更だが、本当に感謝している。
また会いたいな。
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