dialogue 0001 石上純也 × 大塚昌平

石上純也 × 大塚昌平
何故か、、前日も一緒に深夜まで飲んでいたのですが、、、対談の為に、本日も集合!
そして、また、飲みながら、、、二人のおしゃべり対談は始まったのだった、、、
大塚:我々、ふと気付くと、随分前から知り合いですね。

石上:そうですね。大学院の頃からだから、随分長いことになりますね。

大塚:いつ連絡しても、、世界中を飛び回っていて、そんな中、こうやって時間をもらえて、感謝してますが、、一体、今、どんな仕事を、何件ぐらいやっているの?

石上:あー、、、確かに、最近忙しいですね。。今は8割以上が、海外のプロジェクトで、国内外合わせて、常時20件くらいのプロジェクトを抱えるので、気付けばスタッフも自然と、外国人が多くなりましたね。最近は、中国本土の方からのオファーが多くなってきて、今、、7件くらいかな、、、

大塚:えっ?中国もやってるの??難しくない?中国は、色々大変だった思い出しかないよ、、、まぁ、、、世界相手だと、、何処でもか、、、

石上:いえいえ、、そんな事ないですよ。中国は良いですよ。しっかりクライアントを選べば、逆に建築家を生かすような環境があるように思えます。共産圏では、他にもロシアで、仕事をしてますが、、上手くリンクすると、僕は意外と、仕事しやすいように思います。中国は、、最近面白いですよ。土地も、仕事も、色々あるし、開拓の余地が多くて、絶対面白いと、可能性を感じてます。

大塚:ほう、、そうなんだ、、、、やはり、文化的な進歩を急速に求めているんだろうねぇ。。

石上:まあ、そうですね。

大塚:でも、、やっぱり、石上さんしか出来ないよ!だって、、中国では、夜の白酒の『カンペーイ!』を受け止められないと、、、あれ、キツイでしょ?

石上:えっ、僕は、全然大丈夫ですけど、、そんなに乾杯をきついと思った事ないですけど、、そんなに中国の方々、お酒強くないような、、、

大塚:いや、、、あなたが、強いだけだ!!全く、恐ろしいよ、、、あれ?さっき頼んだ、ワインまだ来てない?

石上:いえ、きたけど、もう飲み終わりました。今、また、たのみます。

大塚:ほら!!一応、、対談中なんだから、、俺も抑えて飲んでるから、、水割りくらいにしなさい!

石上:あー、、、じゃあ、この水割り飲みます。これ美味しいですか?

ーーー暫し、脱線ーーー

石上:そうそう、これ、最近やってるプロジェクトの資料を、持って来ました。

大塚:おーーどうした?資料なんて用意してくれたの!?

石上:対談するのに、昌平さんにいくつか説明しないと、、、対談にならないかな?って思ったので、、、いらないですか?

大塚:いるいる!要ります! 確かに、、その通りだ、、、

ーーー暫し、色々なプロジェクトの説明を受けるーーー

『オランダの公園・Park Groot Vijversburg』『栃木県・那須高原の二期倶楽部』『山口県のHouse & Restaurant』『中国の幅1.35m×高さ45mの教会』など、、、全てのアイディアが面白い!!十数年前に、初めて、石上さんに会った時も、同じ様に、レストランで、ご飯を食べるのも忘れ、、色々と説明を受けたのを思い出す。既に我々は、いつも通り、水割りをガバガバ飲んでいるのだが、、私が、どんな質問をしても、彼は、考え抜かれた的確な答えを返してくれる。そう、久しぶりに、彼の懐かしい安心感に浸り、気持ちよく、酔いながら、2時間以上も、プロジェクトのレクチャーを受けたのだった。

大塚:凄いね。感激した。石上さんは進化し続けてるね!作り手って、誰しも、手グセみたいなモノがあって、それに作り手自身が、気付いて、それを超えるアイディアを、生み出す為に、、苦悩するのが、普通だと思うんだけど、、、自然と、手グセも、その生み出す苦悩すら、、、感じさせないモノばかりだね。

石上:そうですね。手グセは誰でもあるけど、それだけじゃあ駄目だと、僕は、思ってるんです。アートと、建築はちょっと違う、建築は自分の内側から出て来たモノだけでは駄目で、どちらからというと、アイデアは自分の外側からやってくる。実際、目的としては、クライアントや、その建築物を使う人の為にあるわけだから、、、

大塚:えっ?そんな事、、、石上さんが、、、言うなんて、、とはいえ、、確かに、、、クライアントの話を聞いた上で、クライアントのイメージを、遥かに凌駕するものを提案しているね。。クライアントが、与えた、過酷な環境条件が新しいアイディアを生み出し、自然と、手グセを消す発想なのかな、、

石上:それもそうだけど、、、これは先日、書いた論文の内容と重なるけど、、、20世紀までは多くの人達が、未来に対する思想を共有できた時代だったと思うんですよ。だから、クリエーター達も、自然と目指すべき方向性が、見えていた様に思えるんだけど、、今は、宇宙を目指す人もいれば、、田舎暮らしを目指す人もいる、、、個々人が、それぞれ異なるの未来を見ていて、それぞれを理解することはできても、一つのものが全員の共通事項ではない時代だから、、、一つのモノや、スタイルを、突き詰めて回答を出すより、、僕等は、どれだけのバリエーションの回答を出せるか?!生み出すことができるか?!つまり、多様に、多くのモノを作り出す事が重要になっていると、思うんですよ!

大塚:ほう、難しいね、、、時代のムーブメントの中でスタイルやキャラクターを設定して、売るんじゃなくて、、、一つ一つの単発的に生み出すキャラクターから、総合的に何を伝えられるか、、、何か、俳優の本質論みたいな話だな、、、どんな役柄も、、、見る側に、何の先入観も持たせず演じきる。つまり、俳優本人のオリジナリティを、全く感じさせない、、、そんな俳優になれるか、、、確かにそうすれば、、、手グセはないね、、、

石上:そうそう。正にそんな感じです、、、

大塚:ストーリーがロケーションなんだね。ストーリーによって演じる役者。ロケーションによって生み出す建築!環境が作り手の能力を引き出す事が、大事なんだね。

石上:そう。それに順応して生み出す事が大事です。

大塚:そうか、、、俺マネージメントだったから、いつも、クリエータに対して、想像できるリスクの少ない環境を、与えてあげたいと思ってたけど、、それ、、駄目だったんだね。。クリエーターは想像するフィールドを広げてあげた方が進化できたのか、、何か凄い反省だ。。そうすれば、手グセなんてどうでも良くなる訳だったのか、、、

石上:いやいや、実際には、手グセはありますよ。求められる事もあるし、、、まぁ、でも、、守られちゃ駄目だし、過剰に守っても駄目ですよね。昔は一つのモノを修練して、何か一つを達成することが、大事だったかも知れないですけど、簡単に、色々なものが作れるのが現代の特徴なのですから、、変化し続けるのは、、常に流動的な現代では、当たり前の事だと思うんですよ。

大塚:はい。仰る通りだと思います。

石上:それを、ポジティブに考えれば、、なかなか面白い時代ですよね!ポジティブに考えれば、やりがいのある時代ですよ!!

大塚:確かにね!そうなのかも。ところで、、作り上げる、、上げた、、建築物に対しての責任感とか、その後の理想って、、何かあるの???

石上:僕は、勿論、機能的なことは全て抑えてるつもりですが、、、竣工時と、全てを、同じ状態でキープして貰いたいとは、あまり思っていないんですよ。使い方によって、壊せる部分も作らないと、、変えれない所と、変えれる所をバランス良く作って、使う人と上手く共存しなければ、建築は成立しないと思ってるので、、、

大塚:ほう。その、余白は計算してるの?

石上:いや、計算というより、必ず、そういうモノが入り込める様に作ってるんです。コンセプトレベルでも、設計レベルでも。

大塚:そうなんだ、、、当たり前に、そういう事を言うようになったんだね、、今日は、石上さんっていう人の見方が大きく変わったよ。

何故、上記のような、失礼な返答になるのか、、ここで小話を挟む、、、十数年前、、我々はある家具屋の会議室にいた。『石上さん、収納系で何かデザインして頂けないですか?』『あっ、、良いですよ。わかりました。』その数日後、『昌平さん、こないだの、出来ました!打ち合わせ、行きましょう!』そして、また、その会議室。『はい。これです。花瓶です。表面張力で、、、水は落ちません、一輪挿しです。』明らかに、凄いアイディアの花瓶なのだが、アイディアより、何より、、会議室の全員が、、、、『えっ、、、収納系、、』『収納!?、、って、花瓶だっけ!?』と、混乱したのを思い出す、、会議室の余りの空気感に『おい!花瓶は、収納家具じゃないだろ!』と、勇気を出して、私が言うのだが、『えっ、収納ですよ。一輪挿しは、、、』と、何処吹く風で、彼はプレゼンを続けたのだった。勿論、当時の我々は、ソレを、収納家具として推し進める力量も無く、商品化に、至らなかったのだが、、、今では、その会議室にいた、皆が、、、『あれは、収納家具に間違いなかった!』と、自分達の、器の小ささを、悔いているのだった、、、、、

大塚:もう何年やってるの?

石上:独立して13年ですね。。。その前に4年。。

大塚:まぁ、、色々変わったね、、、

石上:そりゃ、色々変わりますよ。

大塚:しかし、こんなパワーのいる仕事してて、、、その支えとか、糧となってるモノは何なの???

石上:うーーん。どうなんでしょう、、、糧というか、、、今までの、自分を形成した記憶は、常に、きっかけを、作ってくれているんだろうなぁ~と思いますが、、とはいえ、モノを作る為に、多くの犠牲を払っているのも事実だから、、、とにかく、前を向く様にしてます!!糧っう糧は、、あんまりないなぁ~

大塚:そうなの??周りの人とか全く関係ない、自分だけの糧だよ?ないの??

石上:いや、やっぱり、記憶かな~。自分が、昔、良いと思ったものが、、、簡単に否定される時代だから、、、糧というか、、守りたい気持ち、、なんか、自分が良いと思うものを真剣に繋ぎ止めたいなぁ~。と、思ってるんですよ。建築的な話じゃないですよ、、変化する時代の中で、どう存在させるか、、、建築って作っちゃうと、毎日それに強制されちゃうから、、、

大塚:自分の記憶を思想に置き換えて、作った建築物を通して、将来理解してもらいたいっう事なのかな?

石上:思想っていうか、、、もっと流動的で、、、流れに乗れるか、、、動いていく物事に対して、自分が、如何に柔軟になれるかだと思うんですよ?モニュメントみたいなモノは、壊れないものと思われがちだたけど、、、壊れないものは、、壊されないもので、、、時代の流れからして、より柔軟な発想のものじゃないと、残らないでしょ。残らないモノを作っても意味がない、建築にとって、残る事はすごく重要だと思うんですよ。特に現代においては。

大塚:ほう。未来に何を残すか、、、

石上:みんなが好きで、愛してくれないと、建築物は残らないんですよ。簡単に、建て替えできるわけですから、、設計において、自分の意思を強引に通す時もありますが、僕は、いつも、どれだけ残せるか?環境に愛されるか?を意識して作ってますよ。

大塚:ふむふむ。何だか、今日は勉強になります!いつも、テキトーに石上さんに、、、チャチャ入れてる、自分を反省してます。ところで、最近若手建築家が活躍しだしてるけど、どう思ってる?

石上:さっきも言いましたけど、現代は、建築に一つの共通の目標があるわけじゃないから、色々な人が色々な建築を作れたら、それで良いと思う。建築が量産されてた時代から、ひとつひとつの個性が重視される時代になりつつあるから、例え、共通項がなくても、異なる地域の異なる状況のいろんな建築家が頑張れることは素晴らしい事だと思います。なんか、、、建築は進化していると言っても、結局、デジタルなガジェットツールみたいな進歩は遂げてないと思うんですよ、、電子機器の3年で変わっちゃうサイクルじゃなくて、、、やっぱり100年後でも、1000年後でも存在出来るのが建築だと思うんだけど、、、結局、昔から変わらない、、原始的なのは否めないんで。でも、建築家がやれる事は、まだ色々ありますからね。僕としては、古典的な意味を超えて「現代において変化しないこととは何か。」みたいなことを考えたいですね。

大塚:確かに、そうかもね、、、相変わらず、面白いなぁ。もう、楽しすぎて、飲みすぎて、、、上手く編集できる自信もないので、、、最後の質問だけど、、もし何でも、好きなもの作れる!って言ったら、何作りたい?まぁ、予算は無限にあるから、気にしなくて良いから、、、

石上:自分でやりたいとしたら、、、星作りたい!!あっ、、まぁ、、月ぐらいで良いですよ。えっ、、、何でも良いんですよね?

大塚:アハハハ、、勿論!何でも!!それはコミュニティを設計したいとかじゃなくて、、

石上:なんでもいいなら、地球っていう、前提条件を外して、、、重力から何から、環境設定から全て、作れたら面白そうですよね。今の科学とか技術は、知識の上では、そこまで行ってると思うんですよ。ここから先は、重力が横のエリアとか、色々出来て、面白そうですよね、、、人類の全ての知識を集めたら、、、、絶対、面白いモノが出来ると思うんですよ。まぁ、、それに追いついていないのが、、、、今の、建築で、、、だから、地球の前提条件を外して、、、星を一つ、建築してみたいですね!まあ、夢のある話としてですが。

大塚:アハハハ、真面目に、そういう事を言う、石上さん、、変わってない!!面白かったし、聞き足りないから、、次回もやりましょう!対談も、もっと、自由でいいはずだから、、終わりなし!!

石上:あーやりましょう。僕も、何か、久しぶりに、ゆっくり色々話せて、楽しかったです。

この様に、対談のトップバッターを石上純也さんにお願いしたのだが、、まぁ、彼の進化が凄くて、、対談なんて、正直、どうでも良くなり、、色々、勉強させて頂きました。やはり、元々、彼は、世の嗅覚に鋭いのですが、、、常に戦場で戦ってる経験から身につく皮膚感覚的な研ぎ澄まされた思考能力は、凄まじく、、机上の空論で、悟りを開こう的な、私とは、、もう、異次元のバケモノでした。ここ数年は、二人で、一緒にお酒飲んで、いつも、楽しいから、、ちょっと身近に感じていたけど、とんだ勘違いでした。いや、思い起こせば、、、彼に初めて会った時から、彼は、衝撃的に、、凄かったんです、、、
何か、改めて、、、、感激しました。
私も努力しなきゃ、、、

 

*ちなみに写真を撮り忘れて、、、、やっと昨日、飲みながら、、パシャり!

 

石上純也:1974年、神奈川県出身。東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修士課程修了、妹島和世建築設計事務所を経て2004 年、石上純也建築設計事務所を設立。主な作品に「神奈川工科大学 KAIT工房」など。2008年ヴェネチア・ビエンナーレ第11回国際建築展・日本館代表、20 10年豊田市美術館で個展『建築のあたらしい大きさ』展などを開催。日本建築学会賞、2010年ヴェネチア・ビエンナーレ第12回国際建築展金獅子賞(企画展示部門)、毎日デザイン賞など多数受賞。詳しくはWikipediaを見て下さい。

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