『 ~ベトナム旅~ Cuc Phuong National Park パート1』

先日、私はベトナムのCuc Phuong National Parkに虫撮りに行って来た。column0098の続きにあたるが、ハノイからマチェさんの車で3時間掛けて、やっとCuc Phuong National Parkへ辿り着いたのである。

前回: https://11documents.com/2018/06/25/column0098/

この国立公園は蝶で有名らしいのだが、何より素晴らしい事に、国立公園内にロッジがあり、エアコンもあり、お湯も出ると言うので、、『センシティブで御坊ちゃま』な私は、そこを基地にじっくり虫撮りを楽しもうと計画したのだ。
勿論、エクスペディアみたいな旅行サイトに出ている訳は無く、直接ホームページから、予約をするしかないのだが、不安はよそに、レスポンスよく返信がきて、宿泊の予約を取ることが出来たのだった。

公園の入り口に着くと、ゲート脇の小屋から、シャツを着た英語を話せる紳士が現れ、宿泊の対応をしてくれた。ここまではナカナカ、想像以上に完璧なのではないだろうか、、ハノイからの車の手配も出来ていたし、、やけに順調だ、、が、次の瞬間、彼は『明日は何時に帰るの?車は何時に手配します?』と言うではないか、、いやいや、それは違うぞ。。『2泊するから!メールでちゃんと確認したじゃん!!』と伝えると『あっ、2泊ですね。そうかそうか、、う~ん、、、』えっ、まさか部屋、満室なんじゃない!?おいおい、、と心配になったが、少し間をおいて『2泊了解です。部屋に案内しますね。』ふぅ~良かった。。やはり、ここは人気な宿泊施設で、多くの人が利用しているのか!?とはいえ、私は自分の都合を伝えなければならない。。『明後日なんだけど、夜中の便で帰るから、18時位までここに居たいんだけど、レイトチェックアウト出来る?だから、車は18時で手配してもらえますか?』『問題ないですよ。18時まで部屋を使ってください。』素晴らしい。。これでギリギリまで撮影しても、シャワーを浴びて着替えて帰れるのだ。『ところで、何をしに来たんですか?車やバイクは必要ですか?』『昆虫を撮影しに来たんだけど、バイクとか必要なの?』『昆虫ですか。。。昆虫は余り解りませんが、、何処でも一杯いる気がするので、、まずは、歩ける範囲で良いかもしれないですね、、バイクや車が必要なら、いつでも言ってください。』素晴らしい対応だ、、何より『昆虫』と聞いて、怪訝な顔をしない、こんな事は初めてだ。きっと多くの昆虫写真家達が訪れるのだろう、、『じゃあ、とりあえず、今日、歩いてみる。』

ゲートから5分程度の部屋への移動中にも、、見たことない蛾や、蝶、バッタなどを見かけ、素晴らしい場所に来た予感がするのだった。。

部屋は、全てが簡易的ではあるが、想像より綺麗で二つのベッドが置かれ、テレビも冷蔵庫も、シャワー付きのトイレもある。しかもクーラーがあるのだ!!開けっ放しだった窓を閉め、クーラーをガンガンにつけ、、撮影に行く準備をしながら、冷蔵庫を開けると、、『ん!?全然、冷えていないし、、』そして、何匹もの小さなゴキブリの死骸が、、『まぁ、ちっちゃい事は気にしない!それ!ワカチコ!ワカチコ!!』ペットボトルの蓋をせずに置いても、溢れる心配のない位、限りなく硬いベッドには、、天蓋では無く、蚊帳が上部に付いている、、『そうか、蚊とか入ってくるのか!?』っうか、今まで、窓全部開いてたし、、これも『ワカチコ!ワカチコ!!』部屋のドアに1cmの隙間があっても、、『ワカチコ!ワカチコ!!』

私には大きく分類すると、2種類の写真の撮り方がある。蝶などの全体像をズームレンズで捉え自然光で撮影する場合と、小さな昆虫をマクロレンズで、昼夜を問わずストロボを使い接写する場合だ。。レンズ交換と細かい設定を毎回いじれば、勿論、どちらも可能なのだが、経験上、二兎追うのは、ターゲット設定が曖昧になり、結果、集中力を欠く場合が多いのと、、38度という暑さも暑さなので、この部屋をベースに、、機材のバックパックを持たずに最小限の交換用電池とタオルとタバコとお金だけ持って、小刻みに戻ってくる事から始める事にして、、何故かマクロ設定で出発!!

まず、部屋の近くを探索しよう!と、その瞬間、『ガサ!ガサッ!』イグアナみたいなトカゲが、、部屋の横に居たし、、ちょっと上の壁を見ると、、デカい蜘蛛いるし、、日陰の石壁には、良く見ると、小さなツチバッタみたいなのが100匹位着いてるし、、『ヒィ~~!』と思い、振り返ると、デカいザトウムシが壁にいるし、、撮影どころではない。。気を取り直し、徘徊を始めるのだが、、兎に角、色々いるのだ。。『ビビるな!昌平!怯むな!昌平!!ここは天国のはずだ。。』こんな状態なので、チョロチョロと撮影をしながら、辺りを散策する、、『ガサ!ガサッ!』と、ならないから、怯んでいると、、気づけば、足元の土に擬態した大きなカエルがいる、、『ヒィ~~!!何?何?!ちゃんと隠れようよ、、』『ん??』上を見たら、木から黄色い蜘蛛がぶら下がってきてるし、『ヒィ~~!』日本ではある程度、慣れているし、その生態も少しは把握しているが、、ここの生き物は別だ、、『知らんがな!毒があったらどうするの!?』などと呟きながら、ほんの1時間程度で、何度も虚を突かれ、、第一ラウンドはノックアウト負け。。気温も高いので、溢れ出る汗で、既にビショビショだ。。という事で、逃げるように、一度、部屋に戻ることにした。。

部屋はガンガンにつけたクーラーのお陰で、涼しく素晴らしい。冷蔵庫は相変わらず、冷えていないが、第二ラウンドに望むために、、気持ちを入れ替えるべくシャワーを浴びようと、トイレのドアを開けた、、『ガサッ!』えっ、、そうなの、、そうなんだ、、私は確かに見た、日本でみる数倍の大きさのヤモリが慌てて、壁に付いている温水器の裏に隠れるのを、、そう、私は、この部屋に一人ではないのだ。。『いや、、はっきり言おう、そんな安心感などいらない!!いらんのだ!!』追い詰められる気持ちを打開するには、兎に角、動くしかない!『ちっちゃい事は気にしない!それ!ワカチコ!ワカチコ!!』自分に言い聞かせる、、

という訳で、ソソクサと、レンズを変え、バッテリーを確認し、、国立公園の奥へ、第二ラウンドへ出発することにした。何処もかしこも、右も左も、、森なのだが、奥地に向けて、車やバイクが走れる一本道があるのだ。とりあえず、その道を突き進んで様子をみる事にしたのだ。

歩き出して、数分で、色々な蝶が飛び回ると共に、、ハエやアブや蜂も飛び回りだす。。数分は、炎天下の中、私が、汗をかきだすのに充分な時間であり、、その私の周りに、無数の小さなハエやアブが飛び回りだす。。
晴天の森に健やかな風が吹きこみ、枝が擦れ合う心地よい音を搔き消す、、耳元を飛び交うハエ達の『ブ~~ン、ブ~~~ン、、ブ~~ン』が止まらない。。いくら手で振り払っても、3秒後には戻ってくる、、そうか、『虫を探しに行くのに虫除けなんて要らない!』と、言い続けてきたが、虫除けが必要だったのかも、、などと思いながら、歩き続ける、、15分も歩いた頃には、何となく気付きだすのだが、この大量な小さなハエみたいな奴等は、明らかに私のメガネをターゲットにしている、、私ではないのだ。。そう、気づけば片手に持つカメラの周りにも数十匹の大群が群がっているのだ、、『恐ろしい。。』つまり、プラスチックパーツに吸い込まれる様に群がっているようだ、、幸いにもカメラのレンズ面には、微塵も興味が無いようなので一安心だが、、鳴り止まない『ブ~~ン、ブ~~~ン、、ブ~~ン!!』にノイローゼになりそうになる。。咥えタバコで、煙大作戦を展開するも、全く効果なし、、『おお、そうか、、次回はコンタクトレンズにしよう!』なんて、こんな事を考えながら、歩いているモノだから、、引き続き、集中力ゼロ。。まぁ、色々撮るのだが、魂がこもらない。。

気づけば、1時間以上が経ち、Tシャツはグチョグチョに、、余りに一本道で、指標となるモノが、何も無いので、、(湖とその周りに数軒のロッジがあっただけで、、あとは永遠、、一本道)予定より進みすぎてしまったかもしれないと、急に思いだした。。何せ、私、、タバコは持つが、水を持たないという、そもそも、基本が間違っている男。。38度の炎天下、、戻りの道も含めると、、若干不安を感じだしたのだ、、『所さんも熱中症になったって言うしなぁ~』『帽子って意味あるのかなぁ~持ってないけど、、』という訳で、ここらで、引き返す事にした。。

人間、不思議なモノで終わりを決めると、集中力が増す。顔の周りを飛ぶハエ達にも慣れはじめたのか、往路よりも色々な被写体が目に入ってくるようになるのだ。。そんな中、私は目を疑った、、目の前の枝の葉の上に、カメムシがいるのだが、、5cmをゆうに超え、カブトムシサイズなのだ、、『えっ?ちょっと待って、、何?えっ?カメムシ?!』と、余りの驚きから、撮るより先に、身体が自然と近づいていってしまった、、すると、そいつは外側の茶色の前羽を開き、内部の毒々しい真っ赤な腹部を見せながら、奥の木の葉に飛んでいってしまった。。残念な事に、その距離だと、その時のレンズでは、望遠が足りず、サイズ感の解らない絵になってしまうので諦めたのだが、、日本のカメムシと比べると容積的には10倍以上だろうか、、『カメムシ推し』を公言してきた私だが、、正直、『恐怖』を感じたのだった。。そんなこんな、見た事ないモノを色々見ながら、、さりげなく、日陰を選び歩くようになった自分に、迫り来る、熱中症の危険を感じながら、、黙々と歩く、そう、つまり、身体が水を欲し出したのだ。。タバコを吸ったり、写真を撮ったり、自分を誤魔化しながら、何とかゴール!部屋に辿り着いたのだ。ドアに手を掛けると、ドアに張り付く赤い虫が目に着いた。またカメムシだ、、しかも、コイツは、、先日、私の尊敬する超有名昆虫写真家のダスティンさんの顎をただれさせた液体を出す凶悪なヤツじゃないか、、彼のインスタグラムを読んでいて良かった、、無防備に触ってしまったかもしれない、、なんて思いながら、なんだかんだ、、撮る。。そして無事、クーラーのついた部屋に入るのであった。

部屋に入り、冷蔵庫を開ける、、『何!?やはり、、冷えていない、、何故だ、、』若干、怒りを感じつつ、冷蔵庫の裏を見ると、コンセントが抜かれている!『おーい、、電源かーーーい!!初歩だろ、初歩!!』慌ててコンセントを入れるが、、冷えるのは、いつになるのか、、

『ワシは、、冷たい水が、、飲みたいんじゃーーー!!』
『何もいらん、、だから、、冷たい水をクレぇーーー!!』

『あっ!?売店があるって言ってたな、、』という事で売店に向かう。売店というか、、部屋だ。売店の店員はそこに住んでいる家族のようで、小さな女の子が、水のペットボトルを出してくれた。『おお、、なんて素晴らしい女の子なんだ、きっと神の使いに違いない、、』しかし、その神々しい女の子の様子がおかしい、、どうやら、私の出した紙幣へのお釣りがないようだ、、『気にするな!今の俺は、飲み物なら幾らでも買うぜ!』と、ビールやらコーラやら、水を更に買い足しお釣りを無くしたのだった。。部屋に戻る途中、冷たい水に、浮かれていたのか、、注意が足りなかった。左足で何かを踏んでしまったのだ、、『えっ?!』味わった事のない感触に、完全にビビりながら、下を見ると、靴の横にカブトムシが『ギーギィー』叫びながらしがみついている、、私に踏まれ、、ツノは折れてしまっていた。申し訳ない気持ちと、撮りたかったチェンスを失った気持ちで、、複雑な心境ながら、彼を近くの木に移したのだった、、

部屋に帰り、やっと、、無心で、冷たい水を、カバのように、がぶ飲みした。。

時刻は、もう夜6時、、第二ラウンドもノックアウト負けだったのだろう、、涼しいクーラーの中、シャワーを浴び、、想像以上なベトナムの国立公園に、もう『ワカチコ!ワカチコ!!』言う余裕も無くなり、、一人、、ちょっと挫折していたのだった。。

<続く>

2 件のコメント

  • 楽しく読ませて頂きました。近い内に行こうと思っておりましたので、虫よけスプレーやその他重要な事を教えて頂き感謝します。

  • コメント有難う御座います!今思うと、凄く良い所です。残念ながら、その後、、マレーシアなどで虫除けスプレーを付けて見ましたが、無いよりあった方が良い程度の効果でした、、あと、ここは、バイクを借りた方が移動効率が上がり良いです!私もまた行きたいです!是非、行ってみて下さい!

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